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不動産の価値は“住所”で決まらない

プロだけが見る5つの視点を、データと制度から読み解く

不動産の価値は「どこにあるか」で決まる――
これは半分正しく、半分は誤解である。

住所やエリアは確かに重要だ。しかし実務の現場では、同じ街区・同じ駅・同じ住所でも、価値がまるで違うケースが無数にある。
その差を見抜くために、プロは“住所以外の視点”を重ねて評価している。

本稿では、「価値を分ける5つの核心」を整理する。


1. 需給バランス:人口・世帯数・単身需要のデータ

住所よりもまず見るべきは、「そのエリアにどれだけの需要が存在するか」である。

● 世帯数は価格を左右する

東京都の人口はゆるやかに横ばいだが、単身世帯は増加を続けている(出典:東京都「人口推計」)。
例えば23区の中でも、千代田区・中央区・港区は単身者の流入が続き、賃貸需要が底堅い。

● エリア内でも“需給差”が大きい

同じ駅でも、出口が違えば世帯構成・人口密度・商圏が異なる。
地図上では距離が近くても、実需の強さは大きく異なることがある。

つまり、住所は入口でしかなく、「需給データの裏付け」が価値を決める。


2. 建物の物理的スペック:築年数・構造・管理品質

住所よりも“建物”そのものが価値を変える要素は多い。

● 管理状態の違いが価格に直結

国土交通省「マンション管理適正評価制度」では、以下の項目が評価対象になる。

  1. 長期修繕計画の有無

  2. 修繕積立金の健全性

  3. 共用部の維持管理

  4. 管理組合の運営状況
    (出典:国土交通省「マンション管理適正評価制度」)

評価が高いマンションは成約価格が一定水準以上で維持される傾向にある。

● 物理的スペックも“住所を超える価値”を持つ

・構造(RC/SRC/木造)
・耐震基準(1981年改正、2000年改正)
・新耐震の適合状況
・インフラの更新履歴

これらは全て、長期の資産価値とリスクを左右する。


3. 価格の「五つの評価軸」=一物五価

住所だけでは不動産価格の実像はつかめない。
不動産には目的に応じて5つの価格が存在する(出典:国土交通省「地価公示」「地価調査」・国税庁「路線価」)。

  1. 実勢価格(実際に取引される価格)

  2. 公示地価(国土交通省:毎年3月)

  3. 基準地価(都道府県:毎年9月)

  4. 路線価(国税庁:相続税評価)

  5. 固定資産税評価額(市区町村:3年に1度)

特に実勢価格は、周囲と同じ住所でも建物状態・専有部のリフォーム・眺望・階数で大きく変動する。

住所=価値ではない。
住所はあくまで「価格の一つの基準点」にすぎない。


4. 災害リスクとインフラ整備状況

価値を分ける要因として、災害リスクとインフラの整備状況は重要だ。

● ハザード情報は全国で公開されている

国土交通省「ハザードマップポータル」では、洪水・土砂災害・液状化・津波などのリスクを確認できる。
同じ区内・同じ住所でも、“道路を一本渡るだけで”リスクが変わることも珍しくない。

● 災害リスクは価格形成に影響

不動産鑑定士の実務でも、災害リスクは価格調整要因として扱われる。
近年は買主側もハザードマップを確認するケースが増え、成約価格に影響が出やすい。

● インフラ整備の影響

道路幅員、下水道の整備、駅までのアプローチの安全性、街路の明るさなどは、賃貸需要にも大きく関わる。


5. 法律・規制:用途地域・容積率・建築制限

不動産の価値は「そこに何が建てられるか」で大きく変わる。
この点は住所よりも“はるかに”価値を左右する。

● 用途地域(都市計画法)

住宅地・商業地・工業地などに区分され、建築できる用途が決まる(出典:都市計画法)。

● 建ぺい率・容積率

同じ住所でも、敷地形状や前面道路の幅員によって容積率が大きく変わる。
結果として、建てられる建物の規模=土地の価値を左右する。

● 斜線制限・日影規制・高度地区

特に都心部では、法律・条例により「建物の高さ」「敷地利用の自由度」が制約される。

● 市街化調整区域

開発許可が必要で、自由な建築ができないため、住所が同じでも価値は大きく異なる。

不動産の価値は、“住所よりも法律によって”大きく揺れ動く。


6. 同じ住所でも価格が違う理由:事例的にまとめると

以上の5つの要素を重ねると、「住所はただのラベル」であることが分かる。

例えば同じ区・同じ町内でも、次のような差が起きる。

・管理が良いマンションは、中古でも新築時価格を維持
・管理不全マンションは市場で敬遠され、平均より低値に
・災害リスクの高い区画は、価格上昇が鈍化しやすい
・容積率に余裕のある土地は、開発余地が価格を押し上げる
・同じ駅でも出口の治安・街の明るさで賃貸需要が変動
・公示地価が同等でも、実勢価格が大きくズレることがある

これらは全て、住所では説明できない“実物資産としての個別性”に由来する。


7. Beyond Realtyが採用する評価アプローチ

当社は、上記の5つの視点を複合的に組み合わせ、下記を重視している。

・需給データの精査
・ハザードリスクの分析
・管理品質の調査
・法規制チェック
・将来の修繕計画の妥当性
・賃貸需要の分布
・実勢価格の比較分析

特に海外投資家・富裕層が求めるのは、**「住所ではなく、本当の価値を示す説明」**である。
市場データ・制度・現場の管理状況など、客観的な裏付けを出すことで、誤解のない意思決定につなげられる。


8. まとめ:住所は入口にすぎず、価値は“多層構造”で決まる

不動産の価値は、住所の“イメージ”や“ブランド”に左右されがちだ。
しかし実際の価格は、以下の五つの層で決まる。

  1. 需給データの裏付け

  2. 建物の物理的スペックと管理品質

  3. 一物五価の相互関係

  4. 災害リスク・インフラ状況

  5. 法律・規制による制限

この五層を重ねて初めて、価値の“本当の姿”が浮かび上がる。

不動産の評価は地図上だけでは完結しない。
現場の空気、管理の質、将来の修繕計画、法律の制限。
こうした“目に見えにくい要素”を丁寧に読み解くことこそ、資産価値を守る唯一の方法である。

当社は今後も、データと現場の両面から「住所を超えた価値」を提供していく。


【出典一覧】

・東京都「人口推計」
・国土交通省「マンション管理適正評価制度」
・国土交通省「ハザードマップポータルサイト」
・国土交通省「地価公示・地価調査」
・国税庁「路線価」
・都市計画法関連資料