日本列島の土地価格は、今や「全国一律の右肩上がり」などという幻想とは無縁の時代に突入しています。首都圏や主要都市の一部で地価は堅調に推移する一方で、地方の多くでは下落が止まらず、「二極化」がますます顕著になっています。
かつては「持っていれば価値が上がる」と言われた不動産。いま、その常識は通用するのか?そして、なぜ地方都市で明暗が分かれているのか?その構造と背景に迫ります。
■ 勝ち組地方都市の条件とは?
地方であっても、地価が上昇している都市は存在します。たとえば、以下のような都市が近年「勝ち組」として注目されています。
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福岡市:人口増・若者流入・都市機能の集約化が進み、再開発も活発。市内全域で地価上昇。
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金沢市:観光地としてのブランド力に加え、新幹線延伸によりアクセス性が向上。
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那覇市:インバウンド需要の回復とともに、観光・リゾート開発が加速。
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松山市・高松市:四国の中核都市として一定の需要を維持。周辺都市からの移住も。
これらの共通点は、次の3つです。
①「若い人口」が流入している
大学や就職先、都市機能が集まっていることで、若年層や子育て世代の流入が地価を支えます。
②「再開発」が進んでいる
駅前や中心市街地の再開発が行われている地域は、不動産価値の再評価が起こりやすい。
③「観光・インバウンド需要」がある
国際線・新幹線の利便性や観光資源が豊富な地域では、宿泊施設や商業地の需要が安定しています。
■ 負け組地方都市の現実
一方で、地価が下がり続けている“負け組”地方都市も少なくありません。中でも特徴的なのは次のような地域です。
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人口が減少している中山間部
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工場や産業の撤退が相次いだ旧工業都市
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郊外団地の空洞化が進むベッドタウン
こうした都市は、都市機能の維持すら難しくなりつつあります。過疎化、高齢化、空き家率の上昇、公共サービスの縮小といった問題が複合的に進行しており、不動産を“保有するリスク”が顕在化しています。
■ 「駅近」「利便性」より重要な、新たな価値観
従来は「駅近・南向き・整形地」が資産価値の三種の神器とされてきましたが、今やその評価軸だけでは足りません。とくに地方都市においては、以下のような新たな指標が注目されています。
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生活圏としての自立性(スーパー・病院・学校)
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働く場所と住む場所が近接している
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自治体の財政健全性と子育て支援策
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移住・二拠点生活など外部需要の有無
つまり、「選ばれる街」でなければ土地の価値は上がらない。もはや“駅からの距離”や“坪単価”だけでは不動産価値を測れない時代に突入しています。
■ 投資・相続の視点で考える「勝てる土地、持ってはいけない土地」
不動産を資産とする場合、今後は以下のような視点がますます重要になります。
◆ 投資視点
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将来的に転売・賃貸ニーズが見込めるか?
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再開発の可能性はあるか?
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法人誘致や大学設置などによる需要喚起があるか?
◆ 相続視点
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売れない土地を子どもに残すリスク
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固定資産税や管理義務の負担増
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「負動産化」した土地の処分にかかるコスト
相続予定の不動産が、今後の価値減少が避けられない地域にある場合は、早めの売却や活用策の検討が必要です。
■ 最後に:全国の土地を“同じ目線”で見てはいけない
「地方だから安い」「田舎の土地は将来上がるかもしれない」――このような考えは、すでに現実と乖離しています。
いまや、不動産価値は**人口・経済・行政施策の“集中と選別”**によって左右される時代です。
地方都市に投資するにも、土地を相続するにも、「その街の未来を見抜く力」が求められています。もはや、不動産を見るには“地図”ではなく“未来予測”が必要なのです。