2024年からスタートした新しいNISA制度。年間投資枠の拡大や非課税期間の恒久化により、投資環境は一変しました。個人投資家の資産運用が「一部の富裕層」から「一般層」へと広がる中、改めて注目を集めているのが“不動産”です。
ただし、ここで言う不動産投資はひとつではありません。現物不動産、REIT(不動産投資信託)、そして不動産関連株式――それぞれに特徴があり、得られるメリット・リスクも大きく異なります。新NISAという追い風をどう活かすか?タイプ別に解説していきます。
① 現物不動産投資 ― 安定性と実物資産の強み
マンションやアパートなど、現物の不動産を購入して賃貸収入や売却益を狙うスタイルです。
メリット
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安定したインカム収入(家賃収入)
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インフレに強い資産
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節税効果(減価償却・損益通算)
デメリット
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初期費用が高く、NISA対象外
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管理・修繕などの手間とコスト
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空室・災害・金利上昇リスク
ポイント
NISA口座では運用できないため、NISAとは別の“リアル資産運用”として並行戦略を取る人が多いのが実情です。新NISAで得た利益を、現物不動産に“再投資”するという活用法も選択肢の一つです。
② REIT(不動産投資信託) ― 分散投資と手軽さが魅力
REITは、複数の不動産を保有する投資信託。東京証券取引所に上場されており、株と同様に売買可能です。
メリット
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少額から不動産投資が可能(1万円台〜)
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分配金利回りが高い(3〜5%程度)
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新NISAでの非課税対象になる
デメリット
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値動きが株式と連動しやすく、ボラティリティがある
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金利や不動産市況に敏感(下落リスクあり)
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インフレ耐性は現物に劣る
ポイント
REITは新NISAの成長投資枠で非課税保有が可能。長期で分配金を受け取りながら、値上がり益も狙える点は魅力です。特に物流施設系REITや、都心オフィスに強い銘柄は人気が高く、分散投資の一環として有効です。
③ 不動産関連株 ― 景気敏感株としての側面も
不動産会社(例:三井不動産、住友不動産、東急不動産HDなど)の株式も、新NISAの成長投資枠に組み入れることができます。
メリット
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成長性や配当狙いが可能
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業績次第で大きな値上がり益も
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株主優待などのメリットも
デメリット
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市況に左右されやすく、景気悪化時に下落しやすい
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利益は事業構造(販売/賃貸)によって大きく変動
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賃貸型より開発型のほうがリスクが高い
ポイント
不動産関連株は、株式投資+不動産の両側面を持つ点が特徴。中長期で安定配当を出している銘柄に着目すれば、REITよりも成長性を期待できる局面もあります。
それぞれの“使い分け”が投資の鍵
投資手法 | 初期費用 | NISA対象 | 安定性 | 手軽さ | 成長性 |
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現物不動産 | 高 | × | ◎ | △ | ○ |
REIT | 低 | ◎ | ○ | ◎ | ○ |
不動産株 | 中 | ◎ | △ | ○ | ◎ |
資産運用の目的(インカム狙いかキャピタル狙いか)、手間やリスク許容度によって、最適解は人それぞれ異なります。
新NISAを活用するなら、REITや不動産株をまず投資ベースとして活用し、その収益や経験値をもとに現物投資に挑むという“段階的投資”も、非常に合理的な選択肢です。
最後に:不動産を「金融資産の一部」として考える時代へ
これまでは、「投資=株、資産形成=不動産」と別物のように扱われてきました。しかし今は、NISAの登場により、株式・REIT・現物不動産が同じ土俵で選ばれる時代になっています。
重要なのは、自分の資産全体を見渡したときに「どこに、どのくらい、なぜ投資するのか」を明確に持つこと。不動産を“持つべき資産”としてどう組み込むか――それが、これからの投資成功のカギとなるでしょう。