区分マンション投資の落とし穴
副業解禁、老後2000万円問題、FIRE(早期リタイア)志向の高まり――こうした時代の追い風を受け、会社員による不動産投資、特に**“区分マンション投資”**が活況を呈しています。
「月々1万円の持ち出しでマンションオーナーに」
「年金代わりに老後の不労所得を確保」
こうしたキャッチコピーを見かけたことのある方も多いはず。
しかし、区分マンション投資は本当に“手堅い資産運用”なのでしょうか?
今回は、近年急増する「サラリーマン投資家」が見落としがちな、区分所有のリスクと落とし穴について、プロの視点で解説します。
■ そもそも「区分マンション投資」とは?
「区分」とは、マンション一棟のうちの一部屋単位(1K~2LDKなど)を購入し、賃貸に出す投資手法。
一棟アパートに比べて初期費用が少なく、会社員でも住宅ローンではなく**投資ローン(不動産担保型)**を活用して始めやすいのが特徴です。
■ “誰でもできる”と思われがちだが…
手軽さの裏に、数々のリスクが潜んでいます。
✅【1】利回りの“数字トリック”に注意
「表面利回り7%!」と聞こえはいいですが、以下の経費を差し引いた“実質利回り”は、往々にして3〜4%以下に落ち込みます。
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管理費・修繕積立金
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固定資産税・都市計画税
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賃貸管理手数料
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ローン金利・団信保険料
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修繕・空室時の持ち出し
表面利回りだけで判断すると、実際には“持ち出し型”だった…というケースも少なくありません。
✅【2】空室リスクと家賃下落は避けられない
新築・築浅では満室でも、築10年、20年と経年するごとに競争力は低下。
同じエリアに新築や人気のリノベ物件が出ると、空室が長期化、または家賃を下げざるを得なくなることも。
サラリーマン投資家は「空室1ヶ月=給料が1割吹き飛ぶ」ほどのインパクトを受ける可能性があり、想定外の家計負担に陥ることもあります。
✅【3】“出口戦略”が立てにくい
区分マンションは「売却」が難しい資産でもあります。
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賃貸中だと実需層(自己居住希望者)に売れない
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ローン残債が多く、売却しても赤字になることがある
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同一建物内で他戸が値崩れしていると、自室の価値も連動して下がる
出口戦略が描けない=“資産”ではなく“負債”に変わる危険性も。
✅【4】セールストークに“思考停止”で乗らない
よくある営業トーク:
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「保険代わりになりますよ」
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「節税になりますよ」
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「ローンは家賃で完済されますよ」
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「将来、年金代わりに」
これらは**“部分的には正しいが、全体では危険”という話が多いです。
たとえば、「節税」と言われても、減価償却を取り終えた数年後から逆に課税が増えることも**。
✅【5】借入の“枠”を消費する
区分投資を複数持つと、本当に必要なとき(マイホーム購入・事業融資など)に借入が通らないリスクがあります。
これは、いわば「投資で未来の選択肢を潰している」状態。
■ それでもやるなら、最低限これだけは!
サラリーマンでも区分投資を成功させている人は確かに存在します。
彼らは以下の点を徹底しています:
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✅ 利回りは“実質”で6%以上を目安に
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✅「駅近・人口増加エリア・築浅」など資産価値にこだわる
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✅ 管理組合・修繕履歴など建物全体の健全性をチェック
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✅ 自主管理より信頼できる管理会社選びを重視
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✅ 最終的な出口戦略(売却 or 持ち続ける)を明確に持つ
■ まとめ:区分マンション投資は「不労所得」ではない
区分マンション投資は、手軽に見えて**“意外と手間がかかる”実業型ビジネス**です。
特に会社員は「本業に支障をきたさず、資産形成したい」という動機が多いため、リスクとのバランスを冷静に測る視点が欠かせません。
▶ 本当にやるべきかどうかは、“目的”と“余力”から逆算を
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「節税したい」なら→本当に節税になるのか数字で確認を
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「年金代わりに」なら→20年後の資産価値・修繕費も計算を
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「資産形成したい」なら→一棟投資やREITと比較検討も視野に
区分マンション投資は、「買って終わり」ではなく「買ってからが本番」。
“儲かりそう”ではなく、“管理できるか”を問う視点こそが、あなたの資産を守る最大の防御策です。