新型コロナウイルスの影響を受け、リモートワークが普及し、オフィス需要は一時的に急激に落ち込みました。その結果、多くのオフィスビルが空室率の上昇に悩まされ、賃料の値下げや、テナントの流出が加速しました。しかし、2023年以降、オフィス需要は再び回復の兆しを見せ始めています。では、ビルオーナーにとって今後のオフィス市場はどのような動きを見せるのでしょうか?本稿では、オフィス需要の回復の背景と、それに伴うビルオーナーの戦略について考えてみましょう。
■ 1. 2023年以降のオフィス需要の回復
◎(1)企業のオフィス活用再評価
リモートワークを採用する企業が増えたものの、対面でのコミュニケーションやチームワークの重要性も再認識されています。特にクリエイティブ業界やコンサルティング業界、営業職が主力の企業などでは、**「オフィスに集まることで生まれるシナジー」**を重要視する動きが強まっています。
さらに、企業のオフィス利用率は「フルフレキシブル」から「ハイブリッド」に移行しています。社員のリモートワークと出社を組み合わせるモデルが一般的となり、柔軟なオフィススペースのニーズが高まっています。
◎(2)「フレキシブルオフィス」の需要増加
従来型の「長期契約型オフィス」に加え、コワーキングスペースやシェアオフィスなど、フレキシブルな契約形態が増加しています。特にスタートアップ企業やフリーランス、個人事業主などのニーズに対応した施設の需要は今後も拡大すると見込まれています。これにより、オフィスビルの空室をフレキシブルに活用する新たなビジネスモデルが求められています。
■ 2. オフィス需要回復の鍵を握る要素
◎(1)立地の重要性
オフィス需要が回復する中で、特に重要となるのが「立地」です。駅近・交通アクセスの良さ、周辺環境の利便性などは依然として、オフィス選びにおいて最も大きな要素です。特に、都心部の主要ターミナル駅周辺や、再開発が進んでいるエリアは今後、需要が高まると予想されます。
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都心回帰:リモートワークが一部定着している中でも、オフィスへの定期的な出社が求められる企業や部署にとって、利便性の高い都心エリアのオフィスは依然として強い需要があります。
◎(2)オフィス環境の進化
今後、オフィスビルの選定において、単なる「場所」としての機能を超えて、オフィス内での快適性や働きやすさが重視される時代になります。従来のオフィスよりも「最新の設備」「コロナ対策が施された環境」「エコ性能」「柔軟なレイアウト変更が可能な空間」などが求められ、従来型のオフィスからの脱却が進むと考えられます。
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ウェルビーイング:社員の健康や快適さを考慮した空間デザインや施設(例えば、カフェテリアやフィットネススペースの設置、自然光の導入など)が企業にとって重要視されています。
◎(3)ハイブリッドワークに対応する柔軟性
ハイブリッドワークが定着していく中で、企業にとっては「社員の出社頻度」に応じて必要なオフィスの面積やレイアウトの調整が求められる場面が増えています。これに対応できるよう、フレキシブルな間取りやリース契約を提供するオフィスビルが人気です。また、テレワークとオフィスワークを融合させるためのテクノロジー(オンライン会議設備やクラウドサービスの導入)が進化することも、今後のオフィス環境に影響を与えます。
■ 3. オフィス需要を見極めるためのビルオーナーの戦略
◎(1)市場の動向に敏感になる
ビルオーナーにとって最も重要なのは、市場動向をしっかりと把握し、柔軟に対応できることです。今後のオフィス市場は、テレワークの定着や企業の経営戦略に影響されやすく、急激な需要変動が起こる可能性もあります。定期的に市場調査を行い、エリアごとの供給過剰や需要不足を早期に察知することが必要です。
◎(2)ターゲット企業に合わせたオフィス改装
賃貸需要が回復する中で、従来型の「固定的なオフィススペース」から、フレキシブルな「エリア別オフィス」へと改装するオーナーも増えています。例えば、シェアオフィスやコワーキングスペースの提供を積極的に行うなど、時代に即したオフィス環境を提供することがビルオーナーの競争力を高めます。
◎(3)テクノロジーの活用
オフィス需要の復活を見越して、IoT(モノのインターネット)を活用した施設管理やスマートビル化が進んでいます。これにより、エネルギー管理やセキュリティ、空調などを効率的に管理することができ、運営コストの削減やオフィス環境の快適性を向上させることができます。
■ 4. まとめ:オフィス需要は復活するのか?
コロナ禍を経てオフィスの需要は一時的に低迷しましたが、企業の働き方改革やオフィス環境の進化によって、今後需要が回復していくことは確実です。ただし、その回復には地域やオフィスの種類、設備のグレードなどが大きく影響します。
ビルオーナーにとっては、柔軟なオフィス提供や最新の設備を取り入れた改装など、時代に即した対応が求められます。また、今後の市場動向を注視し、どのタイミングでどのようなターゲットに向けた施策を打つかが成功のカギとなるでしょう。