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留学生・外国人労働者の居住ニーズが日本の住宅市場をどう変えるか

【はじめに:人口減少下の“新しい需要”】

日本では少子高齢化に伴い人口が減少し続けている一方、留学生・外国人労働者の増加が住宅需要を下支えする構造が鮮明になっています。
2024年末時点の日本の在留外国人数は約376万人で過去最多を更新(出典:出入国在留管理庁「在留外国人数(2024年)」)。さらに外国人留学生は約30万人、技能実習・特定技能などの労働者は年々増加傾向にあります(出典:日本学生支援機構、出入国在留管理庁)。

この「新しい居住需要」は、単なる“人口の補完”ではなく、住宅市場の構造そのものを変えつつあるという点が重要です。本稿では、その実態と影響を解説します。

【留学生・外国人労働者が増える理由】

●1.日本の教育機関の「留学生積極受け入れ」

日本政府は「留学生30万人計画」を掲げ、大学・専門学校の外国人比率は拡大し続けています(出典:文部科学省)。
特にベトナム・中国・ネパール・ミャンマー・バングラデシュなどアジア圏からの増加が顕著です。

●2.人手不足による外国人労働者の受け入れ拡大

国土交通省、厚生労働省の発表では、宿泊・飲食、介護、建設、製造、農業の多くで慢性的な人手不足が継続しており、特定技能制度の拡大により外国人就労者の流入が続いています。

●3.円安による「日本で生活しやすい価格感」

2023〜2025年の円安により、アジアの多数の国から見ると日本の生活コストが相対的に低く、学費・家賃の魅力が高まっています。

【彼らが求める“住まい”の条件は何か】

留学生・技能系外国人労働者は、従来の日本人入居者とは異なる「ニーズの明確さ」があります。
2025年時点の各種調査(JASSO、入管庁、自治体調査等)から読み取れる共通点は以下のとおりです。

●1.家賃は「月4〜7万円」が中心

東京23区の場合、特に北区・板橋区・足立区・江戸川区などが選ばれやすく、地方都市では3〜5万円が主流。

●2.保証人不要・初期費用の軽減

保証会社利用必須の物件や、敷金・礼金なしの物件が選ばれやすい。
理由は「日本人保証人の確保が難しい」から。

●3.家具・家電付き

来日直後にまとまった購入資金を用意できないため、備え付け物件のニーズが極めて高い。

●4.職場・学校へのアクセス重視

特に技能実習生と特定技能は、工場・介護施設・宿泊施設など“勤務地が固定”されるため、通勤距離や交通手段が物件選択の決定要因に。

●5.多言語での契約説明

入居・更新・退去のやり取りで「日本語のみ」はトラブルの原因になるため、不動産会社側も英語・ベトナム語・中国語の対応が進行中。

【こうしたニーズが日本の住宅市場にもたらす変化】

◆1.「中低価格帯の賃貸エリア」で需給バランスを押し上げている

人口減少により空室率が上昇する中で、
“外国人入居者がいなければ成立しない家賃帯”が都市部で増えているのが実態です。
特に以下のエリアで影響が大きいことが確認されています。

  • 東京23区:足立区・江戸川区・豊島区・北区

  • 神奈川:川崎市、横浜市鶴見区

  • 愛知:名古屋市中村区、中区

  • 大阪:西成区・生野区
    (出典:総務省住宅・土地統計、各自治体外国人統計)

家賃相場が維持されている背景には、明確に外国人入居者の存在があります。

◆2.「管理不全物件」への需要と再生

留学生や労働者は、築古物件や狭小物件にも抵抗が少ない傾向があり、
築古×低価格帯でも入居が付く市場を形成しています。

その結果、
・築30〜40年級のワンルーム
・駅から徒歩15分以上
・設備が古いアパート
などでもオーナー側には収益確保のチャンスが生まれ、
リノベーション費用の回収が早まるケースも増えています。

◆3.外国人対応を前提とした“管理のアップデート”が進行中

外国人入居者の増加がもっとも強く影響を与えているのは、
管理会社の業務フローの変化です。

現在多くの管理会社が、

  • 多言語対応コールセンター

  • 24時間トラブル受付

  • 多言語契約書

  • ライン・WhatsAppでのやり取り

  • 家具家電オプション

  • 電気・ガスの初期設定支援
    を導入し始めています。

これは、外国人だけでなく日本人入居者にも便利な仕組みとなるため、市場全体のサービスレベルを押し上げています。

◆4.“国籍ごとの集中エリア”が形成されつつある

下記のように、日本各地で外国人が居住する特定エリアが形成され、不動産市場にも影響しています。

  • ベトナム人:新宿区・豊島区・江東区

  • 中国人:豊島区・江戸川区・中野区

  • ネパール人:新宿区・杉並区

  • フィリピン人:大田区
    (出典:東京都「外国人住民統計」2024)

こうしたエリアでは
外国人入居者を前提とした物件づくり・店舗・生活サービスが集積し、住宅の回転率が高く、空室が埋まりやすい市場が形成されています。

【今後の市場はどう動くのか】

政府は2023〜2025年にかけて

  • 特定技能の受入枠拡大

  • 観光・留学のビザ環境緩和

  • 人手不足分野への外国人材活用
    を継続方針としており(出典:法務省・厚生労働省政策資料 2023-2025)、
    外国人住民数が急減するという根拠は現時点では存在しません

これは“推論”ではなく、公表された政策の継続方針に基づく確認可能な事実です。

【結論:日本の住宅市場の“新しい基準”になる】

留学生・外国人労働者の増加は、人口減少で縮小する住宅市場において
・家賃の下支え
・空室の改善
・築古物件の再生
・管理サービスの進化

という“構造的なプラス効果”をもたらしています。

日本の住宅市場は、これから
「日本人のための住宅市場」から「多国籍住民が共存する市場」へ
確実にシフトしていく段階にあります。

その中で、不動産会社・管理会社・オーナーが取り組むべきポイントは次の3つです。

  1. 多言語・多文化対応を前提とした管理の整備

  2. 家具家電付きや保証人不要など、初期費用の障壁を下げる仕組み

  3. 外国人向けに不人気エリア・築古物件の再生戦略を立てること

この変化を捉えられる事業者こそ、生き残り、資産価値を守り育てることができます。