
円安・金利・移民政策が日本の不動産市場に与える影響
2025年時点の一次情報・公的データから読み解く
不動産市場は、国内要因だけで動くわけではない。
2025年時点で、日本の不動産価格を支えているのは、**円安・海外金利・入国政策(移民政策を含む)**といった国際情勢の影響が極めて大きい。
本稿では、日本の不動産市場に影響する三つの国際要素を整理し、“実務でどう判断すべきか”を体系的にまとめる。
1. 円安が生む「海外投資マネーの流入」
■円安は“日本の不動産を安く見せる”
2025年秋時点、為替は 1ドル=150円前後で推移(出典:財務省「外国為替相場」)。
これは2010年代後半に比べ円の価値が大きく下がっている状況であり、
ドル・ユーロ・アジア通貨を保有する海外投資家から見ると、
日本の不動産価格は相対的に割安に映る。
● 円安によるメリット
・外貨で購入すると実質負担が減る
・契約後の円安進行は帳簿上の“為替差益”につながる
・長期保有の安全資産として評価されやすい
実際、国土交通省「不動産価格指数」でも、
東京圏の住宅価格は上昇を続けているが、国際比較ではまだ低い。
● 円安が続くと起きる市場影響
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海外富裕層・企業の物件取得が増える
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都心新築マンションの価格は硬直化しやすい
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海外投資家の“管理重視”傾向が強まる
円安=日本不動産の国際競争力が上がる構造が続いている。
2. 海外金利(米国・欧州)が日本市場に与える影響
■海外金利は“不動産の資金流入・流出”を左右する
● 米国の金利が高いほど、日本に資金が流れやすい
FRB(米連邦準備制度理事会)は2022年〜2024年にかけて大幅な利上げを実施。
2025年も高金利水準が継続(出典:FRB政策金利)。
高金利環境では、世界の資金は本来アメリカに向かうが、同時にリスク資産の調整も起こりやすい。
日本は、低金利かつ安定した資産として
● 不動産
● 国債
が海外機関投資家の「分散投資枠」に組み込まれやすくなる。
● 日本の住宅ローン金利が低位で安定
日本の長期金利は、日銀の金融調整により大きくは上がっていない(出典:日本銀行「金融経済月報」)。
2025年も住宅ローンは歴史的低水準で推移している。
これにより、
・国内実需が支えられる
・投資用物件の融資環境が極端に悪化しない
というメリットが生まれる。
3. 入国政策・外国人受け入れ(事実上の“移民政策”)が住宅需要を押し上げる
日本では「移民」という言葉は使われないが、実態として外国人居住者は増加している。
■外国人居住者数は増加を続けている
法務省「在留外国人統計」によれば、
2024〜2025年にかけて外国人居住者数は増加基調にある。
特に増えている在留資格は以下の通り。
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技能実習・特定技能(労働力)
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留学生
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経営・管理(投資・起業)
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技術・人文知識・国際業務(就労)
これらはすべて “住宅需要を直接生む層” である。
■外国人受入政策が不動産市場に与える4つの影響
1) 都心での賃貸需要が増える
東京23区の空室率が低位で安定している背景には、
外国人単身者・就労者の増加がある(出典:東京都住宅政策本部)。
2) 外国人向けの「管理体制」への要求が上昇
海外投資家・外国人居住者ともに、
● 英語対応
● 24時間トラブル対応
● 契約書の明確性
を重視。
管理品質の高さが物件の競争力を押し上げる。
3) 経営・管理ビザの増加が商業不動産に影響
出入国在留管理庁「在留資格 経営・管理」によれば、
事務所要件を満たす不動産(オフィス・SOHO)需要は一定数存在する。
外国人による会社設立の増加は、都心部の小規模オフィス需要を支えている。
4) 民泊・宿泊ニーズへの影響(エリアにより明暗あり)
観光需要の回復とともに、
京都・大阪・東京の一部で宿泊系不動産の需要が増える一方、
自治体の民泊規制は強化が続いているため、用途地域・条例確認が必須(出典:旅館業法・自治体条例)。
4. 国際情勢が複合的に影響する“住宅価格の方向性”
2025年時点での市場分析に基づき、3つの国際要素が示す方向性を整理する。
■1. 円安 → 海外投資家の購入意欲を押し上げる
・都心部の物件価格は下がりにくい
・外資の買い増しが続く可能性
・高級マンションは海外需要が価格を支える
■2. 海外金利の高止まり → 日本の不動産が“安全資産”として選ばれる
・投資マネーの逃避先(リスクヘッジ)となる
・国内実需は低金利で支えられる
・売主は「出口価格」の下支え効果を得やすい
■3. 外国人居住者の増加 → 賃貸市場を支える需要になる
・単身需要が安定
・法人・外国人向け1LDK〜2LDKの需要が続く
・“管理品質”が価格維持の鍵になる
5. 売却・投資の判断に国際情勢をどう活かすか
■売主側
● 円安時の売却は“海外買主”の反応が良い
● 管理状態を整えると海外投資家の購入候補になりやすい
● 災害リスク・修繕計画の明示が重要
■購入側(投資家)
● 都心部は海外需要に支えられ価格が下がりにくい
● 郊外・地方は需給差が大きい → データ分析が必須
● 外国人需要のあるエリアは長期的に安定
■海外投資家向け
● 円安優位を活かす
● 管理体制を重視し、長期保有に適した物件を選ぶ
● 在留資格“経営・管理”など、拠点形成と併用できるケースもある(出典:出入国在留管理庁)
6. まとめ:不動産市場の未来を決めるのは“国内より海外”
2025年、日本不動産を動かしていたのは、
「円安」「海外金利」「外国人受け入れ(実質的な移民政策)」
という “国際3要素” でした。
これらは、
● 都心不動産の価格維持
● 賃貸需要の底堅さ
● 海外投資家の流入
● 管理品質の重視
を強く後押ししている。
不動産市場の判断は、国内データだけでは不十分。
国際情勢こそが、今後の日本の“資産価値の方向性”を決める最大要因である。
【出典一覧】
・財務省「外国為替相場」
・国土交通省「不動産価格指数」
・国土交通省「住宅市場動向調査」
・国土交通省「土地総合情報システム」
・国土交通省「賃貸住宅管理業法」
・東京都「人口推計」
・法務省「在留外国人統計」
・出入国在留管理庁「在留資格 経営・管理」
・日本銀行「金融経済月報」
・FRB政策金利(Federal Reserve)
・旅館業法・主要自治体の民泊関連条例