かつて「日本の不動産を買う外国人」は一部の富裕層に限られていましたが、いまやその構図は大きく変わりつつあります。円安と国際的な物価差を背景に、日本の不動産は“割安”な魅力的資産として世界の投資家から注目される存在に。観光業の復活、インバウンド消費の回復とも相まって、外国人による日本不動産購入が再び活況を呈しています。
では、実際に外国人投資家は日本のどんな物件を購入しているのでしょうか?その背景と現場の動向を読み解いていきましょう。
■ どこの国の投資家が多いのか?
ここ数年、外国人による不動産購入の中心となっているのは以下のエリアです。
-
中国・香港・台湾:資産の国外分散、教育・移住を視野にした投資。コロナ以降も一定のニーズを維持。
-
シンガポール・マレーシア・タイ:日本旅行リピーターを中心とした“別荘的”需要。京都・大阪が人気。
-
アメリカ・オーストラリア・カナダ:円安の恩恵を受けて、富裕層が東京・北海道などに注目。
-
ベトナム・インドネシア:高度人材の増加に伴い、東京・名古屋などの中古ワンルームを購入。
特に為替が円安傾向にある局面では、ドル建てでの資産運用として日本の不動産は魅力的に映ります。
■ 外国人が“好んで買う”物件タイプとは?
外国人投資家が選ぶ日本の不動産には、明確な傾向があります。
1. 都市部のワンルームマンション
-
東京・大阪・福岡などの駅近、築浅物件
-
賃貸需要が安定しており、インカムゲイン(家賃収入)目的
-
管理がしやすく、賃貸管理代行会社との連携もスムーズ
2. リゾート地の一棟物件・別荘
-
北海道(ニセコ・富良野)や沖縄、軽井沢など観光エリアに集中
-
自家利用+バケーションレンタル(民泊)を兼ねた使い方が主流
-
インバウンド回復で、宿泊施設への投資も加速
3. 京都・大阪の古民家・町家
-
特に京都の伝統建築は「唯一無二の価値」があると評価されている
-
改装して宿泊施設やカフェ、商業スペースとして活用されるケースも
-
地方自治体による規制強化(用途制限など)には要注意
4. 商業ビル・一棟収益物件
-
香港・シンガポール・台湾系の富裕層やファンドが好む
-
安定したテナント収入、利回り確保を目的とした中長期保有
-
日本企業との共同保有や**JV(共同開発)**も増加傾向
■ なぜ今、日本の不動産に注目が集まるのか?
◎ 円安の恩恵
1ドル=150円超の円安により、外貨建ての買い手にとって日本の不動産は“割安”に見える状況にあります。
◎ 政治・治安の安定
日本の治安やインフラ、法制度への信頼感は高く、資産保全や移住候補地としても選ばれやすい。
◎ インバウンド需要の回復
コロナ後の訪日外国人の増加とともに、宿泊ニーズや観光拠点としての投資先としても再評価されています。
■ 現場で見られる課題やリスク
一方で、外国人が日本で不動産を購入する際には、いくつかのハードルも存在します。
-
言語の壁:契約書・登記関連の理解には通訳や専門家が必須
-
融資の難しさ:外国籍で日本居住実績がない場合、ローンがつきにくい
-
用途規制:特に宿泊施設としての活用には、自治体の条例などへの理解が必要
-
管理問題:現地に拠点がない場合、物件の維持管理体制がカギとなる
これらを解決するためには、不動産会社や行政書士・税理士との連携が不可欠です。近年では、外国語対応・海外投資家向けサービスを提供する不動産業者も増えてきています。
■ 今後の展望と“次に狙われる”エリアとは?
以下のエリアは、今後の外国人投資家からの注目が高まると予測されます。
-
富良野・美瑛・白馬エリア:ポスト・ニセコとしてアジア系富裕層が注目
-
名古屋・福岡・仙台:人口集中+都市開発が進行中で利回りも安定
-
岡山・香川・瀬戸内沿岸:欧州系富裕層に人気の「静かで美しい日本」
■ おわりに
かつて「外国人に不動産を売るなんて…」という声もあった日本の不動産業界ですが、今やインバウンド投資は地域活性化の大きな起爆剤ともなり得ます。もちろん、過度な依存や地域住民との摩擦といった懸念もありますが、適切なルール整備と透明性のある流通があれば、外国人投資家と共に日本の不動産市場を成熟させていくことができるでしょう。
あなたの街の「空き家」が、海外富裕層の“理想の住まい”になる日も、そう遠くないかもしれません。