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相続土地国庫帰属制度の活用とその落とし穴

― いらない土地に“国に引き取ってもらう”という選択肢

2023年4月に施行された「相続土地国庫帰属制度」。
これは、使い道のない田舎の土地や管理が難しくなった土地を、一定の条件を満たせば国に引き取ってもらえる制度として注目を集めています。

しかし「制度がある=簡単に土地が手放せる」というわけではありません。
このコラムでは、制度の概要とメリット、そして見落とされがちな“落とし穴”について解説します。

■ なぜこの制度ができたのか?

全国的に進む人口減少と高齢化に伴い、**「相続されたが使い道のない土地」**が増加しています。こうした土地は放置されがちで、草木が生い茂り、空き家が倒壊し、近隣トラブルの原因にもなります。

特に農村部や山林、地方の空き地では「売るに売れない」「固定資産税だけがかかる」といった問題が深刻で、**“負動産”**という言葉も定着しました。

そこで、国が一定条件の土地を引き取ることで、こうした問題の緩和を図ろうというのが「相続土地国庫帰属制度」の狙いです。

■ 制度の概要:引き取りには条件がある

この制度は、あくまで「希望すれば引き取ってもらえる」ものではなく、厳しい条件と審査があります。

【主なポイント】

  • 対象者:相続または遺贈によって土地を取得した個人

  • 対象土地:建物がないことが原則(更地化が必要)

  • 申請費用:1筆あたり14,000円(不許可でも返金なし)

  • 負担金:国に引き取られる際、土地の種類に応じた負担金(数万円~数十万円)を支払う必要あり

  • 却下されるケース:以下に当てはまる土地は引き取り不可
     - 他人の権利(抵当権、地上権など)が設定されている
     - 土壌汚染や崖崩れなど安全性に問題がある
     - 境界が不明確で紛争の恐れがある

■ 活用のメリット:いらない土地の“リスク回避”

制度を活用できれば、以下のようなメリットがあります。

  • 維持・管理・税負担から解放される

  • 子や孫に不要な資産を相続させずに済む

  • 地方にある遠方の土地でも処分が可能

  • 売却先が見つからない場合の「最終手段」として安心感がある

特に、売却益を望まない土地の整理には有効な制度です。

■ 意外な落とし穴:申請は「難関」と心得よ

表面上は魅力的な制度ですが、実際の申請にはさまざまなハードルがあります。

事前準備が非常に煩雑

境界確定や測量、建物の解体、他人の権利確認など、市販の「空き家整理本」では対応できないほどの専門性が求められることも。

不許可となるケースが多い

国が“引き取りを拒否できる”条件が多いため、申請しても不許可になるケースが珍しくありません。その際の申請費用(14,000円/筆)は戻ってきません。

負担金の額が想定以上

山林や農地などは、管理コストが高いため、数十万円単位の負担金がかかることも。土地の評価額と比較して割に合わないと感じるケースもあります。

そもそも「土地の所在がわからない」

地方の山林などでは、登記上の住所はあっても現地の特定ができない、境界があいまいといったケースもあり、手続きそのものが断念されることもあります。

■ 専門家のサポートがカギ

制度の活用には、司法書士・土地家屋調査士・行政書士・不動産業者など専門家の連携が欠かせません。相続登記が未了であれば登記手続きから始まり、隣地との境界確定、解体や整地といったコストと労力についても考慮が必要です。

また、制度の利用が現実的でない場合は、「寄付」「売却」「第三者への無償譲渡」など他の処分手段を視野に入れるべきでしょう。

■ まとめ:制度は“最後の出口”、だが慎重に

「相続土地国庫帰属制度」は、土地を処分できずに悩んできた多くの人にとって、まさに“救済の出口”ともいえる制度です。

しかし、手続きの難しさ、条件の厳しさ、費用負担の現実を正しく理解しなければ、**「時間とお金をかけたのに無駄だった」**という結果になりかねません。

制度を使う前に、まずはその土地の本当の価値を見極めること。
そして、専門家と相談しながら**“本当に手放すべきかどうか”を含めた冷静な判断**が求められます。