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空き家問題の本質とその裏側

― 増える家、減る人

2025年、日本の空き家率は過去最高を更新しました。総務省の調査によれば、全国の住宅のうちおよそ7軒に1軒が空き家という異常事態。新築住宅の供給は依然として高水準を維持する一方で、居住者は年々減り続けています。

この「家が余っている国」の矛盾の背景には、人口構造・経済格差・法制度の問題が複雑に絡んでいます。空き家問題は単なる“住む人がいない”という現象ではなく、“なぜ使われないのか”という問いから始めなければなりません。

「余っている」のではなく、「使えない」家

一口に空き家といっても、その中身はさまざまです。

  • 老朽化が進み、居住に耐えない住宅

  • 所有者不明、あるいは相続が未処理の物件

  • 相続人が複数いて、処分や活用に合意できない土地

  • 商業地に残る低利用の空きビル

こうした空き家は、「需要がない」のではなく、「法的・制度的に動かせない」状態にあることが多いのです。実際、不動産業者の間でも「空き家は眠る資産ではなく、眠らされた資産だ」と語られることが少なくありません。

地方と都市、空き家の“質”の違い

都市部では、築古のマンションや木造アパートの空室率が上昇しています。特に高齢単身世帯が亡くなった後の居住空間が放置されがちで、管理者不在の空き室が増加。孤独死の発生後、心理的瑕疵として市場に出しづらいケースもあります。

一方、地方では「村全体が空き家」という地域も。農村部では、住民の高齢化に加え、子世代が都市に出たまま戻らないため、家だけが取り残されていきます。

空き家問題の質は、地域によって全く異なるという点を見落としてはいけません。全国一律の対策では限界があるのです。

空き家は“社会資産”として活かせるのか

では、この膨大な空き家を、社会の資産として再活用する方法はないのでしょうか?

実は、近年の空き家活用の潮流には明るい兆しもあります。

  • 自治体による「空き家バンク」:若者や移住希望者とのマッチングを図る仕組み。

  • DIY型賃貸:改修を入居者に任せることで、初期費用を抑えながら居住空間を再生。

  • 空き家×起業支援:古民家をカフェやコワーキングスペースに転用する事例が増加。

しかし、これらは「使える空き家」に限られます。**本当に厄介なのは、“使いたくても使えない空き家”**なのです。

法制度の壁と“空き家特区”という考え方

所有者不明土地問題や、相続登記の未実施、固定資産税の減免措置など、空き家問題の背後には制度の“ゆがみ”があります。2024年から義務化された相続登記も、実効性の面では課題を残しています。

そこで注目されているのが、「空き家特区」のような規制緩和エリアの創設です。一定の条件を満たせば、より迅速に解体・転用・売却が可能になる制度設計。行政・民間・地域が連携して“使える空き家”を“活かす空き家”に変えていく動きが、これから加速する可能性があります。

おわりに:空き家は未来への問いかけ

空き家は、ただの空間の問題ではありません。それは「なぜその家に誰もいないのか」という、日本社会の構造的な問いかけなのです。
人口が減り、家が増える。矛盾のようでいて、それは日本が選んできた“分散型社会”の帰結とも言えます。

これからの時代、空き家は“負動産”として放置されるか、“機会”として再生されるか。
その選択は、私たち一人ひとりの意識と、社会全体の仕組みにかかっています。