― 「使えない不動産」が家庭を壊す前に知っておくべきこと
親の家を相続したものの「使い道がない」「兄弟で話がまとまらない」「放置するしかない」――
こうした悩みが急増しています。
2025年現在、日本の空き家は全国で約900万戸(住宅全体の14%超)。
その多くが「相続されたまま放置された住宅」であり、いまや相続=“資産”ではなく、“お荷物”になる時代とも言われています。
なぜ、空き家の相続はトラブルになりやすいのか?
そして、国はこの深刻な問題にどう対応しようとしているのか?
今回は、空き家をめぐる相続の実態と法改正の動向について解説します。
■ トラブルの実態:相続で“誰も住まない家”が増えている理由
空き家になる主なパターンには以下があります:
▶ 誰も住まない
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実家が地方・郊外で、子ども世代は都心在住
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建物が老朽化し、リフォーム費用が高額
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立地が悪く貸し出しも売却も難しい
▶ 共有相続で意見がまとまらない
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複数人で相続し、「売る」「貸す」「使う」で意見が分裂
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修繕費・固定資産税の負担を巡り争いに発展
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「誰も管理しない家」が近隣トラブルの原因に
▶ 相続登記がされていない
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相続登記をせず故人名義のまま放置
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法定相続人が多数で連絡が取れない
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書類手続きの煩雑さから“そのままに…”
**こうした状況が放置されると、空き家は「物理的にも法的にも使い物にならない不動産」**になってしまいます。
■ 現行法の課題:制度が追いつかない“使いにくい不動産”
✅ 相続登記が任意だった問題
これまで日本では、相続登記は義務ではなく任意でした。
そのため、登記されず放置された“所有者不明土地”が増加。公共事業・防災・空き家対策にも支障が出ていました。
✅ 固定資産税の優遇措置
空き家でも土地に住宅が残っていると固定資産税が1/6に軽減されるため、「壊すと税負担が増える」=放置温存という構造的矛盾も。
■ 法改正の行方:相続登記義務化と管理義務の強化
国はこの状況を重く見て、空き家問題への対応を本格化しています。
▶ 2024年4月施行:相続登記の義務化
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相続開始から【3年以内】に登記を申請することが義務化
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違反者には【過料(10万円以下)】が科される可能性
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所有者不明土地の解消へ向けた大きな一歩
▶ 管理不全空き家への対応強化(空家等対策特別措置法の改正)
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自治体が“管理不全空き家”を指定し、固定資産税の軽減除外
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所有者に対し、修繕・撤去・報告義務を課す動きも
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いわば「放置=コスト」となる時代へ
■ 予防と対策:今からできる“空き家トラブル回避術”
✅ ① 家族間での話し合いを早めに
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親が元気なうちに「家をどうするか」話しておく
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相続人全員で定期的に意見を共有する
✅ ② 生前対策を活用する
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遺言書や家族信託を使い、「誰に・どう管理させるか」を明文化
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リフォーム、賃貸、売却など“処分計画”を元気なうちに立てる
✅ ③ 専門家に早めに相談する
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弁護士・司法書士・不動産会社・行政書士などの支援を活用
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地方自治体でも空き家バンクや相談窓口を設置中
■ まとめ:「相続すれば資産」ではなくなった時代に備えて
空き家の相続トラブルは、**“誰にでも起こり得る家庭の問題”**になっています。
いまや「家を残す」ことが必ずしも家族のためになるとは限りません。
だからこそ必要なのは、「将来の“負”動産化を防ぐ視点」。
持つべきか、処分すべきか、管理できるのか――
早めに家族で話し合い、備えておくことが、相続トラブルの最大の予防策です。