「金利が上がると不動産は下がる」は本当か

――単純化された常識と、実務で起きている現実――
「金利が上がると不動産価格は下がる」これは広く知られている“常識”です。
確かに金融理論の観点では、金利上昇は不動産価格に下押し圧力をかけるとされています。
しかし2026年時点の日本の状況を見ると、この関係は必ずしも単純ではないことが確認できます。
本稿では、結論を急がず、金利と不動産の関係を段階的に整理します。
1.前提:なぜ「金利上昇=価格下落」と言われるのか
まず、この考え方の根拠を整理します。
■ 理由①:借入コストの上昇
金利が上がると、住宅ローンや投資ローンの金利も上昇します。
👉 結果
■ 理由②:利回りとの関係
不動産は「利回り商品」としても評価されます。
金利が上昇すると、
👉 結果投資資金が流出する可能性
👉 この2点から「金利上昇=不動産価格下落」という理論が成り立ちます。
2.しかし日本では、この関係が崩れている
ここからが重要です。
■ 日本の金利状況(2026年)
日本銀行は2024年以降、政策金利の正常化を進めていますが、2026年時点でも依然として低水準にあります。
(出典:日本銀行「金融政策決定会合」)
■ 不動産価格の動き
一方で、不動産価格は上昇または高止まりしています。
(出典:国土交通省「不動産価格指数」)
👉 つまり「金利は上昇方向なのに、不動産は下がっていない」
3.なぜこの現象が起きるのか
理由は単一ではなく、複数の要因が重なっています。
① 金利水準がまだ低い
重要なのは「上がったかどうか」ではなく、👉 絶対水準です。
日本の場合
(出典:各国中央銀行・IMF)
👉 結果借入コストは上昇しても、依然として投資可能な水準
② 供給制約が強い
建築コストの上昇により、新築供給は制限されています。
(出典:国土交通省「建設工事費デフレーター」)
👉 結果
③ 海外資金の存在
前回のコラムでも触れた通り、日本の不動産市場には海外資金が流入しています。
海外投資家にとって重要なのは👉 日本の金利ではなく、為替と相対利回り
👉 結果国内金利上昇の影響を受けにくい層が存在
④ インフレとの関係
インフレ環境では
(出典:総務省CPI、日本銀行資料)
👉 結果金利上昇と同時に、不動産需要が維持される場合がある
4.本質:金利は「一要素」に過ぎない
ここまでを整理すると重要な事実が見えます。
👉 不動産価格は金利“だけ”で決まるものではない
実際には
など、複数の要因で決まります。
5.では、金利は無視してよいのか
答えは明確です。
👉 無視はできないが、単独で判断すべきではない
特に重要なのは👉 「どのレベルまで上がるか」
■ 影響が大きくなる水準
👉 ここを超えると価格への影響が顕在化しやすい
6.実務上の判断ポイント
2026年時点で見るべきポイントは以下です。
7.よくある誤解
■ 誤解①:金利が上がったらすぐ下がる
→ ❌ タイムラグがある
■ 誤解②:すべての物件が影響を受ける
→ ❌ 影響は物件ごとに異なる
■ 誤解③:金利がすべてを決める
→ ❌ あくまで一要素
まとめ
「金利が上がると不動産は下がる」この考え方は、完全な誤りではありません。
しかし現実はもっと複雑です。
2026年時点の日本では
これらが重なり、👉 単純な価格下落にはつながっていません
重要なのは👉 「金利を見ること」ではなく👉 金利を含めた全体構造を理解すること
